講座・イベント
第三回臨地講座“有田焼・平戸教会巡り”が2017年4月9日(日)から11日(火)に実施された。
(羽田空港からの24名に福岡で9名が合流して計33名で出発)
1日目 羽田空港 福岡空港 佐賀県有田町(今右衛門古陶磁美術館)
例年より少し遅めの桜に迎えられ、花曇りの中、バスで有田へ向かった。チャイナオンザパーク内のレストラン究林登(クリント)で、昼食のみの参加者1名も加わり、深川製磁の器に盛られたオリジナルランチを楽しんだ。
次に訪れたのは今右衛門古陶磁美術館。第14代今右衛門氏ご本人がレクチャーをして下さり、有田焼の歴史、マイセンに及ぼした影響、有田で焼かれた焼き物が伊万里港から積み出されたため伊万里焼と言われたことなどを教えていただいた。18世紀前期に東インド会社からヨーロッパへ輸出されたくぼみのある色絵草花文髭皿の豪華さ、17世紀後期の鍋島様式・染付月兎文皿のモダンな皿は印象的だった。また、現今右衛門氏の墨はじきの手法による幻想的な美しさに驚嘆した。製作工程や、まだ温かさの残っている窯などを見せて頂き、帰りには奥様共々見送って下さった。
17時頃、海を臨む高い岬の上のホテルに到着。近くの焼罪史跡公園を見学したり、温泉に入ったりしてくつろいだ後の夕食会では、女子大同窓会につながっている方々同士の楽しいひとときに時間の経つのを忘れた。
2日目 平戸市(紐差教会、聖フランシスコ・ザビエル記念教会、松浦資料博物館、オランダ商館) 佐世保市(海上自衛隊佐世保資料館)
小雨の降る中、平戸大橋を渡って世界遺産候補の紐差教会へ。
小高い丘の上に聳える東洋屈指のロマネスク教会の会堂内は、シンプルな中にも美しいステンドグラスに彩られていた。特別に中に入れて頂き、概要を伺った。上へ上へと海路の便の悪い所へ逃げて行ったキリシタンの人々の苦労を思い、賛美歌を歌って静かな時間を過ごした。
次に聖フランシスコ・ザビエル記念教会を見学。1549年にキリスト教を伝えた聖フランシスコ・ザビエルを記念して昭和6年に建てられた。中世ヨーロッパの雰囲気を思わせる美しい教会で、この地に住む信者たちの願いにより、長い年月をかけて建設されたという。教会を出た下り坂で、寺院と共存する光景が見られた。
そのあと78段の階段を上って、長崎県で最も長い歴史の松浦資料博物館へ。平戸城や港もよく見える高台にあり、海外交流に関する資料や歴代の殿様のコレクションなどが展示してあった。
それから昔の街並みの残る通りを歩いて、オランダ商館へ。1639年当時唯一の洋風建築だった石造りの倉庫を復元したもので、1階中央の50センチ四方の太い柱はオランダ本国にもみられる構造だそうである。東インド会社による大航海時代の資料を見学した。
新鮮な海鮮ランチの後、一泊の方たちはここで別れて佐世保駅から福岡空港へ向かった。残りの21名は、海上自衛隊佐世保資料館(セイルタワー)を見学してから高い丘の上に立つホテルへ。あいにくの雨だったが、弓張岳展望台から九十九島方面を臨むことができた。夕食はフレンチ。丸テーブルに分かれて楽しく話に花が咲き、最後の夜を楽しんだ。
最終日 長崎市(外海歴史民俗資料館、出津教会、ド・ロ神父記念館、黒崎教会、枯松神社、遠藤周作文学館)
朝からあいにくの雨。朝、8時半に出発して外海歴史民俗資料館へ。長崎巡礼センターの方のガイドにより、ここから徒歩で外海のシンボル・出津教会へ向かう。今でもドロ様と慕われているフランス生まれのド・ロ神父が明治15年に私財を投じて建てた。台風が多くやってくるこの地のことを考えた低い外観が特徴である。外海地方は徳川幕府の禁教令が出された時からのキリシタンが多く、赴任したド・ロ神父は多くの潜伏キリシタンと接触し、その貧しい暮らしを助けるためフランス式農法やイワシ漁を教え、孤児院、診療所、救助院を開設した。その業績はド・ロ神父記念館で観られた。
高台にある外海歴史民俗資料館に戻り、バスでレンガ造りの美しい黒崎教会へ。映画のロケにも使われたロマネスク様式の荘厳な教会で、ド・ロ神父の設計ともいわれる。信者の奉仕と犠牲によって長い年月をかけて建てられた教会は、その信仰の深さを伝えていた。
伊勢海老丼という豪華な昼食後、枯松神社へ向かう。禁教令後も信仰を捨てなかった潜伏キリシタンたちが信仰を持ち続けた場所の一つがこの枯松神社である。オラショ(祈りの言葉)を唱えた大きな祈りの岩やキリシタン墓が残っている。特に印象的だったのは平たい岩の上に十字架の形に小石を並べて墓参りをし、終わるとすぐそれを壊して何もなかったようにしてしまうという彼らの生活に胸を突かれた。
今春上映された映画『沈黙―サイレンス』が話題になったが、その『沈黙』を書いた遠藤周作氏の文学館に寄った。角力灘を見下ろす絶景の地にある館内で、しばし遠藤周作の文学に触れた。
特色のある行程を楽しみ、かつ考えさせられた臨地講座は無事終了。
ご協力いただいた多くの皆さまに感謝いたします。
企画委員会